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グレッグ・エイベル:バークシャー・ハサウェイの静かな後継者

グレッグ・エイベルはカナダ・エドモントン出身の控えめな経営者。2026年にバークシャー・ハサウェイのCEOとしてウォーレン・バフェットの後任に就く。30年以上にわたるエネルギー分野でのキャリアと、バークシャー内で築いた20年以上の実績を持つ彼は、緻密な実行力と分析力、そしてメディアに出ない謙虚さで企業を変革してきた。この記事では、彼の経歴、リーダーシップのスタイル、今後直面する課題、そしてバフェットが「唯一の選択肢」と評価した理由を徹底的に解説する。

最終更新

25/5/6

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エドモントンからオマハの中心へ


グレッグ・エイベルは1962年、カナダ・アルバータ州エドモントンに生まれた。1984年にアルバータ大学で会計学を優秀な成績で卒業し、実務的で正確な思考を強みにキャリアを開始。プライスウォーターハウスクーパースでの勤務を経て、CalEnergyでエネルギー業界へと進出。


1992年、MidAmerican Energyに入社。1999年にバークシャー・ハサウェイがこの企業を買収したことで、彼の運命が動き出す。1998年に社長、2008年にはCEOに就任し、同社をBerkshire Hathaway Energy(BHE)へと再編成。現在、BHEは米国最大級の風力発電事業者の一角を占めている。


自己主張ではなく実績で上り詰めた男


他の経営者ならその成果をアピールの場としたかもしれないが、エイベルは違った。マスコミの前に出ることを避け、会議よりも財務モデルを好む。まさに、ウォーレン・バフェットが信頼を置いた「影の司令塔」である。


  • BHEを米国有数の効率的なエネルギー企業に育て上げた。

  • 週次KPIと徹底的なレビュー文化を導入。

  • 市場サイクルを問わず20%以上の利益率を維持。

  • 無謀なM&Aに頼らず、着実な成長を実現。


エイベルがCEOの座にたどり着いたのは、人脈やメディア露出ではない。数十年にわたる「黙って結果を出す力」が評価されたのだ。


バフェットとの絆


バフェットは、実力主義を重視する。エイベルの分析力、質問力、そして数字に基づいた意思決定スタイルは彼の信頼を獲得し、2021年には「グレッグが後継者だ。代案はない」と明言した。


この信頼関係は短期間で築かれたものではない。静かに、着実に、着々と積み上げられてきた成果の証である。


彼がすでに率いている帝国


2018年以降、エイベルはバークシャーの非保険事業全体を統括する副会長を務めている。彼が指揮する事業数は189社以上。エネルギー、輸送、製造、小売、サービス業など、多岐にわたる。もはや企業というより「経済圏」と呼ぶにふさわしい規模だ。


彼の管理下にある主な事業


  • BNSF鉄道:米国最大の貨物鉄道ネットワーク。

  • Berkshire Hathaway Energy:再生可能エネルギーを11州で展開。

  • Duracell、NetJets、Dairy Queen、See's Candies。

  • Precision CastpartsやLubrizolなど100以上の製造業。


2025年第1四半期だけで、これらの事業が生み出した利益は50億ドルを超える。彼のマネジメントは、放任ではなく「数字に基づいた自由」である。


国際展開と内部統制


日本の総合商社5社(三菱、伊藤忠、丸紅、三井、住友)への投資も、彼の手によるもの。バフェットも称賛した「高配当・低リスク・グローバル展開」の静かな戦略だった。


彼は各子会社にスコアカード制度を導入。毎月、統一KPIで業績を報告させ、透明性と説明責任を徹底している。


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Greg Abel

2025年5月、ネブラスカ州オマハで開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で、94歳のウォーレン・バフェットがCEO退任を発表した。

バフェットの後を継げるのか?


ウォーレン・バフェットの後継者となることは、単なる役職の引き継ぎではない。資本主義の象徴を受け継ぐことだ。しかし、グレッグ・エイベルには、バフェットの全面的な信頼、取締役会の支持、そして実績が揃っている。


異なるスタイル、同じ価値観


  • より現場主義で、哲学より実行を重視。

  • 分権型経営はそのまま維持。

  • 資本配分は常に合理的、投機を排除。


彼自身、「バフェットを真似ることが使命ではなく、築かれた文化を守ることが責任だ」と語る。


私生活と社会的活動


アイオワ州デモインに居住し、趣味はアイスホッケー。目立つ生活はせず、資産は約10億ドル。Kraft Heinzやドレイク大学、ボーイスカウトの理事も務めている。


バフェットの言葉「バークシャーはグレッグを得て幸運だった」は、全てを物語る。


新時代のリスク


インフレ、地政学リスク、AIによる破壊的変化、そして米国の政治的不確実性。「バフェット的直感」の喪失を懸念する声もある。しかし、エイベルにはその代わりに、「論理」と「継続性」がある。


いま、市場が求めているのはヴィジョナリーではない。実行力のあるオペレーターだ。そしてグレッグ・エイベルは、間違いなく世界最高峰の実行者である。


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