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ニューヨーク証券取引所の簡潔な歴史

1792年のボタンウッド協定から始まり、世界最大の株式市場となるまでのニューヨーク証券取引所(NYSE)の歴史をたどります。この記事では、主要な出来事、影響力のある人物、そして経済的な背景をデータに基づいて詳しく紹介。投資家、学生、金融史マニアに最適な読み物です。

最終更新

25/3/30

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NYSEの起源:ボタンウッドからブロード・ストリートへ


ニューヨーク証券取引所(NYSE)の歴史は、1792年5月17日に署名された「ボタンウッド協定」から始まります。ウォール街のプラタナスの木の下で、24人の証券仲買人が非公式な取引を制度化するために合意しました。この協定は、取引の標準化を進め、後の中央市場形成の基盤を築いた極めて重要な出来事です。


当時、ニューヨークはフィラデルフィアやボストンと並び、商業都市として台頭しつつありました。協定後、仲買人たちは政府債券や一部の銀行株を扱い、Tontine Coffee Houseなどのカフェを拠点として非公式に取引していました。


初期の制度化とインフラの整備


1817年には団体名を「New York Stock & Exchange Board」に改め、独自の憲章を制定。取引は40番地のウォール街の建物へと移されました。この移転により、規則、会費、会長制度が導入され、NYSEは自己規律的な市場として信頼性を高めていきます。


  • 1792年:ボタンウッド協定に署名

  • 1793–1816年:カフェでの取引が主流

  • 1817年:名称変更と憲章制定

  • 1825年:経済成長に伴い上場企業が増加

  • 1835年:ニューヨーク大火で取引所が焼失


19世紀を通じて、NYSEは取引量の増加と金融商品の多様化に対応し、物理的なインフラを整備。1867年には株式ティッカーが導入され、情報伝達速度が飛躍的に向上しました。これによりウォール街と地方投資家がリアルタイムで繋がるようになります。


産業革命と現代取引の始まり


19世紀後半、アメリカの産業革命によりNYSEは急速に拡大しました。鉄道、鉄鋼、石油、銀行といった業界が台頭し、ヴァンダービルト、ロックフェラー、J.P.モルガンといった巨頭が市場を牽引。取引は地域的な活動から国家経済の中枢へと成長していきました。1900年までに、NYSEには1,000社以上が上場し、時価総額は70億ドルを超えました。


その成長に伴い、インフラの近代化が不可欠となりました。1903年、NYSEは11番地ウォール街に壮麗な新本館を完成させます。自然光を取り入れた天窓と広々としたトレーディング・ピットが特徴で、世界的金融センターとしての地位を象徴しました。


規制改革と市場の回復力


ただし、成長にはリスクも伴いました。1907年の金融恐慌は、規制のない金融システムの脆弱性を露呈。J.P.モルガンが私的な救済を主導したことで、NYSEの影響力と限界が浮き彫りとなりました。この出来事が1913年の連邦準備制度設立につながります。


  • 1903年:新取引所ビル完成

  • 1907年:金融恐慌とモルガンの救済

  • 1913年:FRB創設

  • 1920年:NYSEが爆弾テロの標的に

  • 1929年:ブラック・チューズデーと大恐慌


1929年の大暴落を受けて、1934年には証券取引法が制定され、SEC(証券取引委員会)が設立。情報開示の義務化や相場操縦の防止策により、近代的な規制環境が整備されます。戦後の経済成長期には、中間層の拡大と企業利益の上昇がNYSEを再び押し上げ、1960~70年代には電子化が進みました。


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NYSE

ニューヨーク証券取引所の歴史は、数々の劇的な転換と革新の軌跡を辿りながら、現代のグローバル市場の基盤を形作る壮大な物語を物語っている。

グローバル化とデジタル進化


20世紀後半から21世紀にかけて、NYSEはグローバル化とデジタル化の波に乗り、急速に進化しました。1987年のブラックマンデーでは市場保護のためのサーキットブレーカー制度が導入され、2000年代にはアルゴリズム取引や高速取引が主流に。


2006年、NYSE自身が上場企業となり、Archipelagoとの合併を経て株式会社化。2007年のEuronextとの統合で国際的プレゼンスを強化しましたが、NASDAQなどの電子取引市場との競争も激化しました。


デジタル時代と今後の展望


取引の大部分は自動化されていますが、IPOやメディアイベントの際にはフロア取引も健在です。近年では、AI、機械学習、リアルタイム分析を駆使し、注文執行や価格発見の効率化を追求。ICE(インターコンチネンタル取引所)との統合により、グローバル対応の強固なIT基盤を構築しています。


  • 2006年:NYSEが上場企業に

  • 2007年:Euronextと合併

  • 2012年:ICEがNYSEを買収

  • 2020年:コロナ禍でデジタル耐性が試される

  • 2023年以降:AIとESGが市場の鍵に


一本の木の下で始まった手書き取引から、ミリ秒単位で動くAI主導のグローバル市場へ。NYSEの歩みは資本主義そのものの進化を映し出しています。戦争、不況、繁栄、技術革新を乗り越えながら、資本形成と価格発見という使命を今日まで貫いています。


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