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NVIDIA株に何が起きたのか

Nvidia株は、典型的な「ハイグロ株ジェットコースター」をもう一段アップグレードしたような動きを見せました。10月末に時価総額5兆ドル超・株価200ドル台の高値圏で「AI王者」として祭り上げられたあと、中国輸出規制のヘッドラインやワシントンの政治リスク、オプション市場での大規模なプット買いに押され、11月にかけて株価は高値から約18%下落。市場は「そろそろAIキャペックスも一服か」と半歩引き気味になっていました。ところが11月19日夜(米東部時間)、NvidiaはQ3 FY2026決算で57.03Bドルの売上(前年比+62%、前期比+22%)、Data Center売上51.2Bドル、non-GAAP粗利率75%、さらにQ4ガイダンス65Bドル前後という数字を投下。株価は引け値144.86ドルから時間外で最大7.1%急騰し、プレマーケットでも153〜154ドル付近で推移、時価総額は再び5兆ドル超に乗せました。以下、日本の投資家向けに、①決算前に何が起きていたか、②決算が何を変えたか、③これからどう考えるかを、ウォールストリート的な冷静さと個人投資家の本音目線をミックスして解説します。

下落から急反発まで


「Nvidia株に何が起きたのか?」を理解するには、ここ数週間を2つの幕に分けて見るのが分かりやすいです。第1幕は、10月末の5兆ドル到達と史上最高値から11月の調整局面まで。第2幕は、11月19日のQ3 FY2026決算でその不安がひっくり返され、株価が一夜で反転したフェーズです。まずは第1幕、つまり決算前に株価が崩れたプロセスを日本語で丁寧にたどっていきます。


5兆ドル到達から11月の不安へ


10月末、Nvidiaは「無敵モード」に見えました。米市場で時価総額が初めて5兆ドルを突破し、1株あたり約208ドル前後で週末を迎え、その後もおおよそ212ドル付近まで高値更新。海外掲示板では「AI king forever」というミームが飛び交い、「この銘柄をショートするのは自殺行為」とまで言われていました。ところが、こうした“みんなが同じ方向を向いている状態”は、小さなヘッドライン1つで地合いが180度変わりやすいタイミングでもあります。


最初の火種はアジアから来ました。South China Morning Postが「北京が国営データセンターでの外国製AIチップの使用を静かに禁止」と報道。実際には47ページの文書の一部に埋もれたルールでしたが、アルゴリズムも人間も読むのは見出しです。ニューヨーク時間のオープンから数時間で、Nvidia株は約4%下落しました。その数時間後、ロイターは米商務省のコメントとして「Blackwell GPUは現時点で中国向け輸出ブラックリスト上に残る」と報道。NvidiaのData Center売上に占める中国比率はおよそ5%程度と「構造的には小さい」ものの、センチメント上は「政治リスクが表面化した」というメッセージとして受け止められました。


さらに、米国内の政治リスクも重なります。Wall Street Journalは、トランプ次期政権の移行チームが各省庁に対し「AI産業向けのベイルアウト(救済策)は行わない」と伝えたと報道。Nvidia自身は、Samsung・Deutsche Telekom・NokiaとBlackwellベースの5G×AIソリューションで提携するなど、マイクロのニュースはむしろポジティブでしたが、発表後の時間外で株価が一瞬1%上がった程度ですぐに反落し、「マクロ・政策リスク>個別好材料」という力関係がはっきりしました。


オプション市場とAIセクター全体の巻き込み


ヘッドラインの裏側で、テープ(値動き)を加速させたのがオプション市場です。11月入りとともにプット(売る権利)の出来高が急増し、特に195〜188ドル近辺の短期プットに建玉が集中しました。これらを売っていたディーラーは、株価が下がるほどデルタヘッジのために現物や先物を追加で売らざるを得ない「ネガティブ・ガンマ」の状態に陥ります。その結果、小さな悪材料ヘッドラインでも、売りフローが自動的に増幅され、チャート上は必要以上に大きな下落として現れてしまうのです。


同時期に、AI関連セクター全体にも「同情売り」(sympathy move)が広がりました。CNBCは、AMD・Broadcom・Marvellが1日で5〜7%下落したと繰り返し報道。AIアクセラレータ、ネットワーキング、メモリといった関連名が一斉に売られ、AIバスケットを組んでいたファンドはまとめてリスクを落とし、ロングNvidia/ショート同業他社という相対価値トレードも縮小。パッシブなインデックスファンドもNvidia組入比率の調整を通じて売り圧力をかけました。


こうして、株価は約212ドル近辺の高値から192ドルを割り込み、11月半ばには高値から約18%下落。月初からのリターンでもおよそ▲8%という水準まで押し込まれました。決算直前のNvidia株は、「決して崩壊ではないが、明らかに勢いは鈍っている」位置で勝負の夜を迎えたわけです。


市場が恐れていた4つのシナリオ


では、投資家は具体的に何を恐れていたのでしょうか。ざっくり整理すると、次の4つの懸念が決算前の「ベースシナリオ」を占めていました。


  • 中国リスク:輸出規制や現地調達義務でHopperなど既存世代のGPUの需要が落ち込むのではないか。


  • Blackwell前の空白期間:新アーキテクチャ発売前に顧客が注文を一時停止し、「消化四半期」が来るのではないか。


  • マージンのピークアウト:より複雑なシステムやサプライチェーンコストで、粗利率がじわじわ低下するのではないか。


  • AIキャペックスの天井:ハイパースケーラー各社の投資ピークはすでに過ぎ、今後は成長率が大きく鈍化するのではないか。



つまり、市場は「業績崩壊」ではなく「成長カーブのフラット化」を怖がっていました。5兆ドル級のメガキャップにとって、成長率が少し落ちるだけでもバリュエーションの見直しインパクトは大きいからです。この前提の上に、Q3 FY2026決算という第2幕が乗ってきます。


決算ショックの全貌


11月19日夜、Nvidiaが出してきたQ3 FY2026決算は、「無難なビート」ではなく「ストーリーを書き換えるレベルのビート」でした。売上の絶対額、成長率、粗利率、ガイダンス、そして電話会議でのコメント——そのすべてが、直前まで市場に広がっていた悲観シナリオを一つずつ無効化していきました。このセクションでは、数字とストーリーの両面から「何が起きたのか」を分解します。


Q3 FY2026:数字が示した現実


まずトップラインから。Q3 FY2026の売上は57.03Bドル(約570億ドル)、前年同期比+62%、前期比+22%というモンスター級の伸びでした。市場コンセンサスは54.8〜55.3Bドル程度だったので、すでに高かったハードルをさらに約2Bドル上回った形です。すでに5兆ドル企業となったNvidiaが、ここまでのスピードで売上を積み上げている事実は、それだけで「AIバブルはもう終わり」という議論をかなり弱めてしまいます。


中でも投資家が最も注目しているData Center部門は、売上51.2Bドルで前年同期比+66%、前期比+25%。全体売上の約89.8%を占め、もはや事業ポートフォリオのほとんどを担っていると言っても過言ではありません。ゲームやオートモーティブ、プロフェッショナル・ビジュアライゼーションなど他セグメントは「まだ存在する」が、「投資ストーリー上はほぼノイズ」と化しています。


利益面では、non-GAAP EPS(1株利益)が1.30ドルと、コンセンサスを0.04〜0.05ドル上回りました。GAAPベースの純利益も31.92Bドルで前年比+65%前後。注目すべきはnon-GAAP粗利率が75.0%と前四半期から横ばい、かつ前年比で約160bps(1.6%ポイント)改善している点です。本来なら新アーキテクチャ(Blackwell)の立ち上がりで一時的にマージンが圧迫されてもおかしくない局面で、この水準を維持しているのは、価格決定力とシステム/ソフトウェアの付加価値がかなり効いている証拠です。


営業費用(Opex)は4.83Bドルで前年比+18%にとどまりました。売上+62%に対して費用+18%ですから、営業レバレッジは依然として「神がかっている(god-tier)」レベルと言えます。トップラインの伸びがそのままボトムライン(最終利益)に落ちていく構造が続いているわけです。


Q4ガイダンス:市場の台本を書き換えた数字


しかし、本当に市場の度肝を抜いたのは、むしろQ4 FY2026のガイダンスでした。Nvidiaが示した売上見通しは「65.0Bドル±2%」。つまり中央値は約65Bドルで、前年同期比で約+94%、前期比でも+14%程度の成長に相当します。ストリートの事前予想(62.5〜63Bドル前後)を明確に上回る水準で、「そろそろ落ち着くだろう」という楽観的な意味での期待を、いい意味で裏切った形になりました。


セグメント別に暗算すると、Q4のData Center売上はおおよそ59〜60Bドルが暗示されています。一方、多くのアナリストモデルは56〜57Bドル程度を想定していました。つまり、ハイパースケーラーもエンタープライズも「Blackwell前の様子見モード」ではなく、「Hopperを使いながら、Blackwellを同時に積み増している」状態にあるということです。


電話会議でのJensen Huangのコメントもかなりストレートでした。「Blackwellの需要はoff the charts(グラフからはみ出すレベル)」「クラウドプロバイダー向けGPUは今後12カ月分がすでに売り切れ」「Blackwellはフル生産ランプに入っている。今四半期は数十億ドル、次の四半期は数百億ドル規模の売上を見込んでいる」。CEO特有の“ポジショントーク”を割り引いても、ここまで具体的なトーンは、少なくとも「Capexピークアウト論」とは真逆のメッセージです。


中国懸念・一時停止懸念・マージン懸念はこう消えた


決算前に語られていたベア(弱気)シナリオは4本柱でしたが、決算とガイダンスはそのすべてを実質的に否定しました。


  • 中国リスク:中国向けData Center売上は約5%、全体でも低シングル・ディジットに過ぎないと明言。規制が強化されても、全体ストーリーに与える影響は限定的であることを示しました。


  • 「Blackwell待ち」の需要一時停止:顧客はHopperを止めてBlackwellを待っているわけではなく、両方を並行して導入していると説明。トランジション期の「谷」どころか、「山が二つ重なっている」ような構図が見えてきます。


  • マージン悪化:non-GAAP粗利率は75%で横ばい〜改善。システム(NVL72/NVL144)やCUDAエコシステム、ネットワーク製品、ソフトウェアレイヤーの高マージンが、ハードウェアコストの上昇を吸収している構図です。


  • AI Capexピークアウト:Q4ガイダンスが約+94%成長、さらに「2026年のハイパースケーラー投資は2025年を上回る」とのトーンからは、「天井」どころか、むしろ中盤以降の加速が透けて見えます。



電話会議で明かされた注文残とSovereign AI


数字以外で市場をざわつかせたのは、Sovereign AI(主権国家としてのAIインフラ構築)とフルラックシステムの受注状況でした。Nvidiaによれば、各国政府や公的機関などを含むSovereign AIの年率ベースのパイプラインは、わずか1四半期で約10Bドルから20Bドル超へと倍増。これは、米ハイパースケーラーに依存しない「第2の成長エンジン」が立ち上がりつつあることを意味します。


フルラックのBlackwellシステム(NVL72/NVL144)は、2026年の大半の期間にわたり「ほぼ売り切れ」状態と説明されました。この時点で議論の焦点は「需要があるかどうか」から、「電力・冷却・データセンターキャパシティの制約の中で、どれだけ早く納品できるか」に移っています。


名前付きの顧客の話もインパクトがありました。社名ベースでは、Metaが2026年納品分としてBlackwell GPU約35万個を追加発注。TeslaのElon Muskも電話会議で、「来年はNvidiaに対して30〜40億ドル規模の支出をする」と明言し、自社のDojoや各種AIプロジェクトにBlackwellを採用することを示唆しました。さらに、Grace-Blackwellスーパー・チップはすでに主要クラウドへ出荷が開始されていると説明されています。


株価リアクションと「数字で見るインパクト」


マーケットの反応は即時かつ明快でした。11月19日の通常取引終了時点で、Nvidia株は144.86ドルと、その日も堅調に引けていたものの、依然として10月高値よりかなり下にいました。しかし決算発表後の時間外取引で株価は一時155.18ドルまで急騰し、最大+7.1%の上昇。翌朝のプレマーケットでも153〜154ドルと、終値から約+6〜6.5%の水準を維持しました。


象徴的なのは、時価総額が再び5兆ドルを突破し、プレマーケットでは約5.07兆ドル前後に達した点です。10月高値からの約18%のドローダウン、11月に入ってからの約▲8%といったマイナスは、実質的に一晩で「チャート上から消えた」形となりました。これは、単なるショートカバーを超えた、「ナラティブの再評価」を伴うリプライシングと言えます。


  • 57.03Bドル:Q3売上(前年比+62%/前期比+22%)、コンセンサス比約+2Bドル。


  • 51.2Bドル:Data Center売上(前年比+66%/前期比+25%)、売上構成比約89.8%。


  • 75.0%:non-GAAP粗利率(前期比フラット/前年比+160bps)、Blackwell立ち上がり期でも“神マージン”維持。


  • 65Bドル±2%:Q4売上ガイダンス(前年比+94%/前期比+14%相当)、ストリート予想を数十億ドル上回る水準。


  • 5.07兆ドル前後:プレマーケット時点の推計時価総額。11月のドローダウンをほぼ一晩で打ち消す再評価。



これらを総合すると、今回の決算は「なんとか期待値をクリアした四半期」ではなく、「AIスーパーサイクルがまだ中盤にあり、むしろ加速していることを可視化した四半期」と位置付けられます。


NVIDIA 株: まだチャンスか、それとも過大評価されているか?

NVIDIA 株: まだチャンスか、それとも過大評価されているか?

今後のシナリオと戦略


ここまでで、「決算前に何が起きていたか」と「決算で何が変わったか」は整理できました。最後に、「これからどう考えるか」をまとめます。AIスーパーサイクルはどこまで続くのか、株価水準としてどこをイメージしうるのか、そして日本の投資家(個人・機関問わず)はどんなフレームでNvidiaと付き合うべきか。これは予言ではなく、シナリオ思考のための道具立てだと考えてください。


AIスーパーサイクル2.0:まだ中盤、終盤ではない


今回の決算前までは、「AIインフラ投資は極めて強いが、数社のハイパースケーラーに依存する脆い構造なのでは」という見方が一定の説得力を持っていました。金利や規制、政治の風向きが少し変わるだけで、一気に潮目が変わるかもしれない——そんな恐れです。しかし、Q3/Q4の数字と電話会議の内容を見る限り、少なくとも2026〜2027年にかけては、「規模が一段大きくなった第2フェーズ」に入ったと見るのが自然です。


ハイパースケーラーは2026年も投資増加を示唆し、Sovereign AI案件は年率20Bドル超のパイプラインに拡大。フルラックBlackwellシステムは2026年ほぼ通年で売り切れ。これらは、典型的な「終盤のバブル崩壊前夜」のサインとはまったく逆の動きです。また、単にGPU枚数を売るだけでなく、Grace-Blackwellのようなスーパー・チップ、ネットワーク(Infiniband/イーサ系ソリューション)、CUDAを中心としたソフトウェアレイヤーまで含めた「プラットフォームビジネス」としてスケールしている点も重要です。


財務的には、75%という高い粗利率と、売上成長率を大きく下回る費用成長率により、1ドルの追加売上が極めて高い利益率で積み上がる構造が続いています。もしBlackwell世代のマージンが、市場の現在コンセンサスよりも良好だと確認されれば、Nvidiaの「長期的なEPSの天井」そのものが上方修正される可能性があります。


短期の株価イメージとシナリオツリー


短期的には、マーケットの視線は当然「どこまで上がる(下がる)余地があるか」に向かいます。時間外で155ドル前後、プレマーケットで153〜154ドルに乗せている現状からすれば、直近数週間〜数カ月のテクニカルな「マグネットゾーン」としては160〜170ドルレンジがまず意識されやすいでしょう。特に、決算を受けてコール需要が急増し、ディーラーが上方向にネガティブ・ガンマ(上がるほどヘッジ買いをしないといけない状態)になると、上値追いが加速するシナリオもありえます。


もう少し長めの視点(次回決算まで)で見れば、「200ドル超」が現実的なシナリオとして語られ始めても不思議ではありません。もちろんこれは1本のメインシナリオではなく、複数の分岐のひとつに過ぎませんが、Blackwellのランプがガイダンス通りに進み、粗利率が75%近辺をキープするのであれば、数字的には十分成り立つレンジです。その一方で、世界的な景気ショック・新たな輸出規制・サプライチェーンの問題・競合他社の本格追撃など、株価に冷や水を浴びせうるイベントも多く存在しています。


投資家タイプ別・現実的プレイブック


ここからは、日本の投資家を念頭に置きつつ、「どう行動するか」のフレームをタイプ別に整理します(あくまで考え方の例であり、投資助言ではありません)。


  • 長期・ファンダメンタル重視の投資家:Q3/Q4は「AIインフラ投資サイクルが少なくとも2026〜2027年までは続きそうだ」という確認材料と捉えられます。日々のボラティリティよりも、ユニット出荷・バックログ(受注残)・顧客基盤の広がり・ソフトウェア/プラットフォーム売上の比率に注目し、円建てポートフォリオの中で「中核グロース枠」としてどう位置づけるかを考えるのが現実的です。ドル建て資産比率や為替ヘッジ方針もセットで検討すべきテーマになります。


  • セクター・マクロ配分型の投資家:Nvidiaは今回の決算で、AI関連全体の「ベンチマーク」を再設定しました。半導体・データセンター・クラウド・ネットワーク・AIソフトといった関連セクターを構成するうえで、「Nvidiaをどの程度オーバーウェイト/アンダーウェイトにするか」は、事実上AIテーマ全体への賭け方を意味します。一方で、単一銘柄への過度な集中リスクは避けるべきであり、類似テーマの他銘柄(日本株を含む)との組み合わせも重要になります。


  • オプション・短期トレーダー:Nvidiaの決算日は、もはや個別株というより「ミニFOMCイベント」に近いボラティリティを持ちます。インプライド・ボラティリティ(IV)、スキュー、期限構造は、上昇方向へのFOMOと下落方向への恐怖の両方を織り込みます。日本から参加する場合も、単純な裸のコール/プットではなく、コールスプレッドやカレンダースプレッドなど、リスク限定型のストラクチャーを前提に考える方が、睡眠の質を守りやすいでしょう。


  • 「押し目買い」志向の個人投資家:今回の決算は、「ロジックは合っていたがタイミングは簡単ではない」ことを改めて教えてくれました。AIが長期テーマであることはかなり強く確認されましたが、それでも株価は短期的には20〜30%動きうることを前提に、1銘柄への投資比率を決める必要があります。「全部Nvidia」ではなく、AIバリューチェーン(半導体、クラウド、ネットワーク、日本国内の関連株など)に分散することも、リスク管理として有効です。



それでも残るリスクと、日本の投資家への示唆


どれほど強い決算であっても、リスクが消えることはありません。輸出規制は今後も変更される可能性があり、地政学リスクも常に存在します。エネルギー供給やデータセンター用電力・冷却インフラがボトルネックとなれば、GPUの供給能力とは別軸でAI普及ペースが制約を受けるかもしれません。また、ハイパースケーラー各社が自社開発チップ(カスタムASICなど)を拡大すれば、長期的にはNvidiaのウォレットシェアがじわじわ削られるリスクもあります。


日本の投資家にとっては、ここに為替と金利というもう1つの軸が加わります。ドル建てのNvidia株に投資する場合、円安局面では為替がリターンを押し上げ、円高局面では逆風になります。AIスーパーサイクルに乗るというテーマをどこまでドル直投資で取りに行くのか、それとも日本株や為替ヘッジ付き商品で取りに行くのかは、リスク許容度と投資期間によって答えが変わるポイントです。


最後に、今回のストーリーを一言でまとめると、「Nvidia株は、典型的なセンチメントサイクルを一巡したうえで、数字によって再び物語を取り戻した」ということになります。まず5兆ドル到達と高値更新の“お祭り”があり、その後ヘッドラインとオプションフローに翻弄される調整があり、そしてQ3 FY2026という「オールクリア決算」によってAI投資サイクルの延長が確認されました。スーパーサイクルの中でボラティリティは避けられませんが、少なくとも今の時点で「AIのピークは過ぎた」と言うのは、数字を見ればかなり難しいと分かります。


Nvidia株に何が起きたのか——それは、ヘッドライン・フロー・ポジショニングに振り回されながらも、最終的には「圧倒的な業績とガイダンス」が物語を上書きした、というシンプルな答えです。あとは各投資家が、自分のリスク許容度と時間軸に合わせて、この物語にどの程度乗るのかを決めるフェーズに入ったと言えるでしょう。


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